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写真でスケール感や高さを表現するには?案外ロボットアニメ史が参考になりそうだ

taiwan

写真で滝の高さやスケール感は伝えられるのか?


風景写真を撮っているといつも突き当たる難題があります。

スケール感、サイズ、高さなどの表現



私の大学時代の映画カメラマン先生が申しておりました
滝の高さを出すのはとても難しいのだと

スチル写真なら縦構図もできますが、通常、映画では横長にしか撮影しないわけですから、スチル写真に比してより難儀することでしょうな。

こちらの写真、先日わたくしが家族旅行で訪れた城崎の玄武洞であります。滝ではありませんが、似たような感じでスケール感を伝えにくい。
玄武洞

実際にはこの玄武洞
異様な岩石の積み重なりで、畏れを抱くほどの大きさであります。ところが、それをまったく表現しきれませんでした。

<余談>そもそもデジカメを持たずに旅行してたもので、スマホでささっとあまり深くは考えず撮った写真です。申し訳ない</余談>

横に撮っても縦に撮っても、寄っても退いてもダメ
一体どうすれば良いのでしょうねえ?
玄武洞

たとえばブツ撮りでは、タバコの箱をブツの横にならべて写真を撮るなんてのはよくありました(といってもマトモな商品撮影ではやらない方法だろうけども)。
タバコ箱とサイズ比較

<蛇足>最近はタバコがずいぶん嫌われていますから、いくらサイズ感が伝わるとしても、好んで使用されるツールではなくなってきているかもしれません。代わりに森永のキャラメルくらいが丁度良いのではないかとも思ったのですが、その分野の菓子は特大ジャンボサイズをよく土産物屋で見かけますから、これまた指標としては向かなくなってきているかもしれません</蛇足>

そういったタバコ箱と同じことで、
人間だのクルマだのわかりやすいサイズ、しかも自分自身が感情移入できるようなものが並べてあると良いんじゃ…



あれ?
それでも分かりにくいなあ?
人物の配置が手前すぎてとてもマズイというのもあるけども、これ以上うしろに追いやってしまうと人がいることを見逃しかねない。つまり比較対象があることにすら気づいてもらえない。

ある程度の巨大なスケール感になっちゃうと人間ってのも比較対象としては小さいわけですね。

逆にこんなふうに、小ささを伝えるときに人間と比較するのも手ですね。10年前に撮ったものですが、当時としてはあまりにも小型のラジコンヘリ、靴の形とも似ていたので足元に並べてみました。


さて、より滝に近い被写体として京都駅のエスカレーターなどはいかがでしょう?
京都駅で下車された経験のある方はご存知でしょうけども、併設の伊勢丹に沿って長大な階段、そしてエスカレーターがぐーんと空高く伸びております。

が、これも実際にパシャリと撮影してみれば、画面に収められるのはごく一部。
京都駅エスカレーター

あるいは超広角レンズですべてを画面内に収めたとしても、それは単に被写体が小さくなってしまうだけでしょう。

どういう構図とオブジェクト配置が適しているのか?
パースなのか?
アングルも?
消失点?

以下は、びわ湖テラスという、蓬莱山の頂き付近にある場所からの写真です。有名な山の頂ですからかなりの高所なはず…
びわ湖テラス記念写真

いやあ全然わかりませんでしたね。
背景が遠すぎてボケが大きいのと、霞がかっているせいもあるでしょうか。どういう場所なのかが伝わりません。

じゃあ下の写真はどうでしょう?
被写界深度がやや深くなり、人物配置も大から小へとうまく遠近がついたと思うのですけど…なんかこれはこれで素直な視線誘導すぎてちょっと違うかも。
撮り直し写真

高さ、スケール感
これほんっと難しいですね。
背景にひろがる地上との高低差、そして琵琶湖の雄大さはなかなか伝えるのが難しい!

妻も自撮りで苦戦している様子
自撮り

なんとなくイメージを固めつつあるのが以下の写真
あと一歩

そして次が完成品なのですけど、よーく見比べてみてください。

被写界深度を深くとることで、背景となる地上の建物などが視認しやすくなっています。そしてなおかつ対岸にもうっすらと建物が確認できます。
完成品

背景とは十分に距離がありますから霞とあいまって距離感は生じているかと。
また対岸との差によってスケール感もそれなりに判るかと思います。あまりにも被写界深度を深くしすぎるとベタっとしてこの高低差は見えにくくなりますし、それどころか背景の遠さがわかんなくなっちゃうのでほどほどに。

というわけで、ヒジョーに繊細なことになっちゃうけども、構図やレイアウトだけでなく被写界深度のコントロールというのも重要ですね。ただ一概にどうすれば高さが表現できるって結論づけられるわけでもないので、個々に対応するしかないんですけども。

ロボットアニメにヒントがあるかもしれない


ところで山っていうのはどうでしょう?
麓から見上げる山、遠景としての山など。じつはある一定の大きさを超えてしまうと、どうフレームで切りとってもサイズ感は同じではなかろうか?という疑問が湧いてきたことはございませんか?

いまさら富士山の高さなど説明するまでもありませんが、地上はおろか、さらに低い水中から撮影してもやはりフレームに小さく収まってしまえば、巨大感は薄れてしまうものです。
富士山
この精進湖の標高が900mだそうなので、富士山頂までは2876mってとこでしょうかね?

こちらは同じく湖越しの冠雪
琵琶湖西岸に位置する蓬莱山、山頂の標高1173.94mですが、琵琶湖の標高は84mだそうです。地上高おおよそ1090mくらいって感じですかね
蓬莱山

そして私の大好きな景勝地、雨晴海岸から日本海越しに見る北アルプスの山々です。3000m級
女岩 雨晴海岸

快晴だとホント気持ちいい場所
雨晴海岸 北アルプス

日の出は太平洋側からなので、山脈はシルエット化します。
なんだかよく分からんね、高さや大きさよりもそのもの自体が山なんだか分からん


富士山だとこんな感じでシルエットでも山体がよくわかるよね。伊豆諸島の利島より臨む


ざっぱーんと黒潮の波が迫力!(おまけカット)


こちらは富士に似た三角の山だけども、琵琶湖越しの近江富士こと三上山のシルエット


その近江富士はなんと標高432mだから琵琶湖の水面標高84mをさっぴくと...あわわわ(笑)


つまりシルエットの山なんて300mだろうが3000mだろうがあまり変わらないのか!? そりゃそうだよね、ディテールを失った黒ベタなどにスケール感が生じるわけもございません。

こちらは雪山を背負ったビル
街のすぐそばまで迫る山をよく表現できたと思います。標高わずか325mしかない逢坂山、しかも山頂まで全部撮ってるわけではない(笑)
逢坂山

こうなってくると皆さんお分かりかもしれませんが、フレームで切り取るという行為につきまとうのは、そのもの自体のサイズやスケールよりも、フレーム内での収まりかたが見え方に強く影響しているわけです。

それでね、ダグラムだとかボトムズだとかのアニメ監督・高橋良輔さんの事になるんですけど、わたくし個人的に昔からとても好きなエピソードがあるんですよ。それが「ボトムズWeb スペシャルインタビュー」からの以下の引用部分

高橋:ATのサイズに関しては、大河原さんの試作品から得た刺激のほかに、演出上の問題もあったんですよ。設定上は、すでにダグラムでもガンダムの半分ぐらいの大きさなんですが、参加する4、5人の演出家は、どっちも同じように演出してくるんです。

どうしてもロボットを描くとなると、力強さと巨大感を魅力のベースに置かざるを得ないですから、50mのロボットも10mのロボットも、画面で描くにはそんなに差が出ないんですね。もちろん厳密には、その差を感じさせるような演出にしなきゃいけないんですけど、毎週毎週量産されるフィルムは、ひとりで作るものじゃないですから。

じゃあ逆に、いろんな人が否応なく、ある特定の演出にせざるを得ないような方向性というか「制約があったほうがいいんじゃないか?」と考えて、「ロボットは思い切って小さくしよう」と。4mという数字は、僕のなかでロボットのイメージを成立させつつ、人間と対比したときに大きさ感を出せるギリギリのサイズから逆算しています。たぶんこれ以上小さくなるとパワードスーツになっちゃって、一般的なロボットの概念から外れちゃうでしょうから。

以上、引用おわり。
カメラ記事を読んでるような方々はおそらくサンライズロボットアニメ全盛時代に幼少期か少年期か青年期を過ごしたと思われますから、この高橋良輔監督のお話はよく分かるんではないかと思います。

以前からこのエピソードはとても好きなんですよね。
サイコガンダムなんか見てみなさいって、あれ設定身長40mしかないんですけど、ガンダムMark II の四倍くらいありそうな圧迫感、ホンコンシティのビル群よりはるかに大きかったり(笑)

また、ザンボット3とダイターン3だと身長が倍くらい違うんですよ?
知ってました?

東京のビルがどんどん高くなって超高層になっちゃったから、ゴジラの身長もそういった都合により伸びてるんですよね。

上の高橋監督の『50mのロボットも10mのロボットも、画面で描くにはそんなに差が出ない』というお話、まさに我々が困っている「滝の高さ」に他なりませんよね。300mの山でも3000mの山でも、同じようにフレーム内で配置すれば当然同じようにしかなりません。

つまりどの条件でも当てはまる絶対的解決法を提示できる問題ではないのですけど、これらの高橋監督の考え方を常に頭の片隅にでも置いておけば、すこしは助けになるかもしれませんよ。

と、なにも結論づけずにこの話は終わります。
だって高橋監督のこのエピソードが好きというだけで書いているのだから(笑)

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